『飛ぶ教室』 ケストナー

 多感な少年時代、悩みをかかえた少年たちの日常を鮮やかに切り取った小説。著者のエッセイ風の語りかけるような文体から、記憶をたどるように本編に入る構成や、個性的なキャラクター、話のテンポと非常によく出来ていて名作といわれるのも分かる。しかし・・・。
 まあこれは単なる好みの問題になるのだが、こういう「いい先生」ものってやっぱり好きになれないんだなあ。どうも訳知り顔の教師が浮かんできちゃって、その言葉を素直に受け取れない。こういう「いい先生」と相性が合わない不良がいたらそれこそ救われないんないか、とか余計な事をつい考えちゃうんだよなあ。そういう「いい先生」に頼らない教育システムが出来ないかなとか考えたりね。
 それよりも、二人の女性(プラスアルファ?)とよろしくやってナチスに抵抗しながらもベンヤミン(もよく知らないが)と違い亡命も煮詰まりもしなかったという本人の方に興味が向く。