『Gene Mapper -full build-』 藤井太洋

 拡張現実と遺伝子工学の技術が進歩した近未来。遺伝子デザイナーである主人公は、自ら設計した稲がトラブルを起こした可能性があるとの報告を受け、謎の解明のためホーチミンにむかうことなる。    

 電子書籍個人出版からベストセラーとなり紙媒体で出版されることになったといういかにも現代的な本。プログラマーというキャリアを生かし、手が届きそうな技術をちりばめた未来のビジョンは魅力がある。ただメインのところで、もう少しアイディアの飛躍というか全世界を巻き込むようなスケール感が欲しかった気もする。謎解きのミステリとしての側面もあるが登場人物の一部は存在感が弱かったり、犯人側の動機もやや平凡だったりする面もある。しかし、実質一作目でこれは期待させる。次回はハイテクスリラーということだが、資質として的確な選択と思った。