『終着の浜辺』 J・G・バラード

 好きな作家にバラードを入れた癖に、恥ずかしながら本書は初読。意外に(一部を除いて)古典的なSFや現代なら普通小説でも通るよう話が並ぶ。おそらくはバラードが先鋭的であったために40年後になって、アイディアや手法が当たり前に感じられるのだろう。
「ゲームの終わり」はいつ来るとも知れない死刑執行の日をめぐる死刑囚と執行人の話で、今なら少しシュールな現代小説といった感じで、金星人にあったと主張する変人をめぐっての「ヴィーナスの狩人」も普通小説風だ。‘奇妙な味’っぽいのは「ゴダード氏最後の世界」でバラードの小説と意識すると少々意外だが結構気に入っていたり。一方「識閾下の人間像」や「甦る海」はその古風なSFの方で悪くはないもののむしろ印象が弱い。「時間の墓標」や「終着の浜辺」はいわゆるバラードのイメージ。特に後者は<死><浜辺><飛行機><人工島>などなどバラードグッズ満載の上、全体はニューウェーヴSFスタイルであり、ちょっと歯ごたえがある(まだ噛み切れてないや)。

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