J・G・バラード

『人生の奇跡』 J・G・バラード

昨年亡くなったバラードの待望の自伝が出た。早速購入して読了。 自伝的小説『太陽の帝国』でも描かれているように、彼の作品世界は少年時代の第二次大戦前後の上海租界の風景にある。疫病・貧困・戦乱によりあらゆるところに死が蔓延した光景、暴力的な日本…

SFマガジン11月号 J・G・バラード追悼特集号

最初SFマガジンだと気づかなかった。駅構内の書店で入手したのだが、J・G・バラードのポートレイトが表紙で、しかもモノクロで地味だったので分からなかったのである(確認してみたらクラーク追悼特集?はカラーの顔写真だった)。未訳短編、評論、エッセ…

J・G・バラードとロック

もう何日か経ってしまったが、柳下毅一郎さんがイベントでDJをした時のソング・リストが映画評論家緊張日記にのっていた。さすがにマニアックな選曲で、さらに「ラジオ・スターの悲劇」もバラードにインスパイアされた曲であることなど非常に勉強になった。…

SFファン交流会J・G・バラード追悼企画のレポートが

予定が合わなくて行けなかった企画。詳しいレポートがspeculativejapanの方に載ったので歓喜。岡和田さん、有難うございます。いろいろ興味深いのだが、ジャック・ヴァンスを読んでいたのでは、という指摘は両者のファンとしてちょっと想像が膨らむ。『ミレ…

『太陽の帝国』 J・G・バラード

長らく積読していた。実は刊行当時に途中まで読んで止めてしまっていた。まだSFばかりを読んでいた時期だったので読み始めたはいいが、普通小説であるというだけで物足りなくなってしまったのである。さて今回、ああ実にバラードらしい小説だなあということ…

J・G・バラード逝去

自伝でも末期癌であることを告白していたというバラード。 享年78(柳下毅一郎さんの映画評論家緊張日記から)。覚悟はしていたが、やはり辛い。個人的には早くからバラードを理解できたわけではなかったが、ここ10年ほどは本当に重要な作家であることに気づ…

『夢幻会社』 J・G・バラード

というわけで『夢幻会社』を読む。訳者の解説によると、タイトルは意味だけでいえば『限りない夢の仲間』といった訳が適切らしい。大変面白く、興味深い作品である。 主人公ブレイクは医学生時代に死者の復活を図ろうとしてドロップアウトし、飛行や暴力に取…

J・G・バラードが・・・

ニューウェーヴSFに影響をモロに受けた人間として、speculative japanのサイトの登場は嬉しいニュースであった。荒巻先生の飛浩隆論など既に刺激的な展開を見せている。 そんな中、そのspeculative japanでJ・G・バラードが末期癌であることを知った。 1930…

『時の声』 J・G・バラード

バラードの初期短編集。例えばここなんかをみると1962年で、最初期ともいえる時期。とはいえ、この7年後にもう濃縮小説の『残虐行為展覧会』が出るのだが。ともかく初期ということでストレートなSF短編集になっている。『時間都市』を読んでいたので、正攻…

『楽園への疾走』 J・G・バラード

「アホウドリを救え!」核実験の危険にさらされた島を救おうと環境保護運動を展開する狂信的な中年女性医師バーバラと、日々を無為に過ごしていたが彼女に魅了され行動を共にする少年ニールらの激しい活動はいったん成功を収めるかに思えたが・・・。 もちろん…

『時間都市』 J・G・バラード

これは『終着の浜辺』より、さらに〈普通の〉SF短編集のように感じられる。普通というのはアイディアを中心に話が展開されることや、その顛末がはっきりとしたオチとして提示されるといった作品が多いことによる。それにしても見事なアイディアと色彩豊か…

『終着の浜辺』 J・G・バラード

好きな作家にバラードを入れた癖に、恥ずかしながら本書は初読。意外に(一部を除いて)古典的なSFや現代なら普通小説でも通るよう話が並ぶ。おそらくはバラードが先鋭的であったために40年後になって、アイディアや手法が当たり前に感じられるのだろう。「ゲ…