『グラックの卵』 浅倉久志編訳

これは嬉しい♪肩の凝らないユーモアSFが並んでおり、楽しい。楽しいんでひとつひとつコメント。

「見よ、かの巨鳥を!」 宇宙から巨鳥が飛んでくるというそのまんまの豪直球バカSF。 50年代なのに不思議と古く感じない。
ギャラハー・プラス」 酔った時だけ天才というギャラハーのシリーズは不勉強にも初耳。SFらしいアイディアも秀逸なドタバタ快作。
「スーパーマンはつらい」 ちょっと弱いかな。何故かIan DuryのSuperman's Big Sisterを思い出す。
「モーニエル・マサウェイの発見」 売れなかった画家が・・・というなじみのネタをうまく料理。
「ガムドロップ・キング」 子供と宇宙人ネタ。前に読んだ時は大したことないと思っていたが、再読すると細部がなかなかうまい。
「ただいま追跡中」 ボケ役にロボットっていうパターンもあるな。テンポが小気味よい。
「マスタースンと社長たち」 効率よく会社を機能させるとで社員達は・・・という話としてよ いのやら。一種の自走するシステムの話というか。淡々とエスカレーションするある意味背筋の寒くなる話で都市型ホラーともいえるか?(黒沢清風!?) とにかく印象の強い怪作。
以前「新しいSF」でも思ったけど、スラデックって他の収録作から浮いているなあ。(<そこがいいんじゃない!©みうらじゅん)
「バーボン湖」 アルコール小噺。こんなのもアンソロジーのバランスで楽しめちゃうんだよなあ。
「グラックの卵」 これまた物凄い艶笑ドタバタ話なんだけど、すっとぼけた語り口が巧み。

肩が凝らない一方で、ちょっと長めの中篇や成人向けネタの作品などレアなものが収録され、うるさがたのSFファンにも配慮されていると思われる。
また、全体に会話が生き生きとしていて、小説なのに良質の漫才のようなリズムや間すら感じられるようだ。