『太陽の黄金の林檎』 レイ・ブラッドベリ

本年最後はブラッドベリで。
ブラッドベリは抒情的な作家というイメージが強く、なんとなく自分の守備範囲外だなあなどと思い、これまた不勉強にもあまり読んでおらず、本書も初読。
「ミルク色の月はイリノイ州の上空に昇り、その光を受けて河はクリームに、道路はプラチナに変貌した。」
(四月の魔女)、「黒や灰色や緑色の機械の一つ一つからは、金色のケーブルや、レモン色の導線が伸び、まっかな紐がついた銀色の袋があり(以下略)(発電所)、「朝のこの時刻の空の色は、オレンジ色、青、紫、ときには真っ赤だったり黄色かったり、岩にしぶきを上げる水のように透明だったりする。」(ごみ屋)といったような色鮮やかな文章は他の誰にも真似できないだろう。もちろんそうした表現は色だけにとどまらず、情感豊かな比類なく美しい世界が描かれている。話としてはあっけないものや単純なオチのものもあるので、食い足りないと感じる人もいるかもしれないが、その辺は好き好きというか食べ方の問題というか。中では怪獣ものの古典「霧笛」、二つの町のあらそいを描いた童話「金の凧、銀の風」、手芸ファンタジー「ぬいとり」、奇妙な風味の掌編「ごみ屋」、グラビア撮影をするカメラマンと邪魔する地元の人のいさかいの顛末「日と影」などが印象に残った。

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