『独白するユニバーサル横メルカトル』 平山夢明

 あけましておめでとうございます。本年もおつきあいをいただければ幸いです。

 新春第一弾はコレ!いやいや早々にエグイものを読んじまった・・・。
 というわけで、残酷な描写や気色の悪い表現をお好みにならない方はこの本を御避けください。

 執拗な暴力残虐行為や、目を背けたくなるような気持ちの悪いものをいちいち描き、人の神経を強烈に逆撫でする筆力は特筆すべき。特に部屋いっぱいに膨れ上がった悪食男をめぐる奇想小説「Ωの聖餐」、夢に逃避する拷問者の危機「怪物のような顔の女と溶けた時計のような頭の男」などは本当にめまいがするようなシーンに満ち満ちている。中では(多少は)そうした部分が少なめの「独白するユニバーサル横メルカトル」は一般性のある傑作といえる。タイトルそのまんまに地図が主人公というアイディアが秀逸で、ストーリーとのからみも良い。また、アジアの謎の国にヒドイ父親に無理矢理連れていかれた男の物語「すまじき熱帯」の歪んだユーモアも印象深い。他に少年少女を主人公とする「C10H14N2(ニコチン)と少年」や「無垢の祈り」も鬱屈したヤングアダルトものとして好む読者もいそう。一風変わった近未来の管理国家SFともいえる「オペラントの肖像」「卵男」もある。