『サンクチュアリ』 フォークナー

 1920年アメリカ南部。自動車事故を起こして帰れなくなった女子大生とその彼氏が、助けを求めた廃屋には無法者がたむろしていてエライ事に・・・。
 まあ著者が“想像しうる最も恐ろしい物語”というのも伊達ではないぐらい陰惨な話。いやあ不注意なんでちょっと内容を甘めに誤読してしまっていたよ。解説読んで、もっとヒドい話と気がついた。とあることから事件に関わりを持った正義感の強い弁護士ホレス・ベンボウが解決していくという筋立てはいかにもアメリカらしいが、全体のトーンは人間の業を感じさせるエピソードにあふれていてヘヴィ。。それでもミステリー/サスペンス仕立てでグイグイ惹きつけられる。月並みだが、見捨てられた人間の心理描写や暴力行為など70年以上の前の作品だというのは驚き。架空の町を舞台に、当時の南部社会の差別、偏見、欺瞞、強欲などなどをそのまま包括的に生のまま描いていこうとしたのだろうか。〈玉蜀黍の穂軸〉が強烈に印象に残る。ちなみに若島先生の『乱視読者の帰還』の「ペーパーバック・フォークナー」を読むと今度は読者の事を思い、合わせて楽しめる。