『ゴーレム100』 アルフレッド・ベスター

 これは恐るべき作品だ。
 二十二世紀の超格差社会<ガフ>。スラム化している一方で、富裕マダムがお遊び降霊術をやっている滅茶苦茶な社会。なぜそんなことになっているかというと、
 
  豪勢な<オアシス>のなかで守られた生活を送ることができ、(中略)ガフを離れることなど考えも  しなかった。食うか食われるかのジャングルは、人を魔法にかける。それは生気にあふれていたのだ!(本文
39pより)

 このエネルギーがベスターならではだ。猥雑で物騒な社会をニューヨーク出身のベスターが好んで描いたのは当然なのかもしれない。この作品も他の長編同様驚くほど濃密にアイディアとエピソードが盛り込まれ、爆発寸前の状態になっている。しかし破綻どころか、

 ベスターが徹底的な計算の上で、そういったものをごっそり抱えて疾走し、飛翔し、見事な着地をやってのけていることは一読してわかった。(訳者あとがきより)

 そうなのだ。悲しいかな平凡な一読者(当方)には、例えばインドゥニの名前の由来をおぼろげに推察することでようやっとアプローチするぐらいだが、とにかくきっちりと作りこまれている匂いがする。さらにそうして計算されたパーツが、強烈なタイポグラフィックやイラストや語呂合わせといった極彩色の函につめこまれているのだ、これを恐ろしいといわずしてなんといおう。それにしてもラス前の謎解きには驚かされた。いやそういうことだったとは。待てよ!ということはこの話ってなに?アレ
!?もう全ては仕組まれていたっとてことか・・・(力量不足で訳のわからないオチとなりお詫び申し上げます)。