『英国短篇小説の愉しみ』3

  1,2はまだ読んでいない。アンナ・カヴァンが読みたくなったので3を。○が面白かったもの。

「輝く草地」○ アンナ・カヴァン  雑草も葉っぱもほっとくとどんどん出てくるよね!今の季節はとくにね!ってそれはともかく。草地を描いても独特の荒涼感が漂うところにこの人の凄味がある。
「殺人大将」○ チャールズ・ディケンズ 「まあ、殺人大将さん、こんな花は今まで見たことありませんわ、何という名前の花ですの?」といった調子でのけぞる。ホラーというより民話っぽい。
「コティヨン」○ L・P・ハートリー  マリオン・レーンは友人に仮面パーティに誘われる。そしてそのパーティには招かれていないはずの別れた恋人が現れるが・・・。ウォルポールとはちょっと使い方が違うが、これまた仮面が効果的に使われている。怪奇風味がいい。
「最後の笑い」○ D・H・ロレンス  ほうチャタレイの。雪の中で帰路に着く人々に奇妙な音が聞こえる。結構変な話で強い印象を残す。
スフィンクスの館」 ダンセイニ卿  ダンセイニ卿は積読してるな。本作はタイトル通りスフィンクスと時にまつわる話で、本作品集では珍しい純然たるファンタジイ。
「写真」○ ナイジェル・ニール  病気の子供が記念撮影をするが。これもなかなか恐ろしいねえ。
「ドン・フアンの生涯における一挿話」 V・S・プリチェット  妻に先立たれたキンテロは、たまたまドン・フアンを泊めることになる。比較的オーソドックス。
「ママが救けに」 アンガス・ウィルスン  これも病気の子供もの。オチが鮮やか。
「ユグナンの妻」 M・P・シール  島に住む友人ユグナンより‘私’に手紙が届く。切迫した内容に会いに行くと、生気に欠けたユグナンがそこにいた。やや大仰な文体が話と合っている。
「世界河」○ A・キラ−クーチ  兄を失った‘わたし’のみた幻想。後半の不気味なイメージに迫力がある。幻想趣味の強いチョイスで傑作ばかりで、異色作家短篇集好きにはえらく満足度が高い。

 どれも短編としても短めでギュッと凝縮されている感じ。1,2も読まなきゃ。