‘The Dreams Our Stuff Is Made Of’

 もう正月デザインにしてしまった。
 で、今年最後はすげー時間かかったけど(1年以上)何とか最後まで眼を通しましたこの本。前半の内容は忘却のかなたですけどね!まあ内容を把握できてない自分がいうのもなんですが、現代SFを俯瞰するのに避けて通れない基本テキストなんじゃないか。あくまで冷徹にSFの可能性と限界を的確に指摘していく感じ。感心したのはその幅広い知識。文学やSFの知識のみならず、UFO現象、カルト、タカ派の動向、はたまた映画・テレビ・音楽などなど豊富な知識が理知的な文脈にはまっていく(という印象)。ともかく、チャンは登場しないけどとりあえずイーガンまでは登場して、索引もあるからまだしばらくはこれを読めば現代SF批評の基本は抑えられる。しかもコンパクトであるのが素晴らしい。以下自分用の備忘録なので、内容が真逆だったりしても石投げないでね。
Introduction SFの可能性と問題点などについての序論。
1.The Right to Lie アメリカと嘘つきの歴史的な深い結びつきについて。Lawrence Wrightの著書への言及があるが、『倒壊する巨塔』の人か。
2.Poe, Our Embarassing Ancestor ポーの影響力の大きさ。UFOマニアやカルトにも。
3.From the Earth to the Moon-In 101 Years NASAやSFが目指した宇宙への夢。もちろん終盤にはバラードが。
4.How SF Defused the Bomb 核爆弾や冷戦のSFへの影響。ディック論にもなっている。
5.Star Treck, or the Future as a Lifestyle テレビとSFの意外と難しい関係について。NW運動についての話やドラッグ体験についての話も出てくる。関係ないがGangsta Rapなんて言葉が登場してちょっと驚く。
6.Can Girls Play Too?Feminizing SF フェミニズムSFについて。党派性に関して、ル=グィンへの批判がある。その厳しい姿勢は孤立を生むことにもなったのだろうか、と考えたり。
7.When You Wish Upon A Star-SF as  a Religion 宗教とSF。サイエントロジーの歴史が詳しく書かれている。他にオウムについてもしっかり書かれている。
8.Republicans on Mars-SF as aMilitary Strategy SFと政治。SF界のタカ派について。ハインラインについてスペースが割かれている。他の章でもハインラインの記載は多く、きちんと読み取れてはいないが様々な面を論評しているようだ。
9.The Third World and Other Alien Nations 異星人表現と第三世界の人々との共通性からはじまり、ティプトリー「男たちの知らない女」についてなど。神に選ばれし者、といった話題からカードの「エンダーのゲーム」について結構分量が割かれて詳しく論評されている。ハインライン作品についてもまた。あとハル・クレメント「重力の使命」を高評価。
10.The Future of an IllusionーSF Beyond the Year 2000 まとめにあたる章。映画のヒットでメジャー化したSFだが、ごく一部を除いてスタート・レックなどのノベライズが収入源となっているSF作家の現状について。近年の特筆すべき動きとしてサイバーパンクとギブスンについて言及されている。
 繰り返しになるが、なかなか難しい用語が多かったので理解はあまり出来ていないと思う。ともかく、熱狂的なファン心理が出てしまいがちなSF評論で、これだけ抑制の効いたクールな評価を貫いたものは珍しいだろう。それでいてSFの表面をなぞるに終わらず、幅広い著作についてしっかりと言及しているのだから、現代SFの教科書といっていいのではないか。

 今年最後の日となりました。読んで頂いた方有難うございました。まあ来年もマイペースでやっていくってことで、特に変わりはございません。それでは皆様よいお年を!