‘Study in scarlet’ Arthur Conan Doyle

 原書。随分時間がかかったがなんとか読み終えた。少しずつで結局4か月くらいかかったかなあ。
 シャーロック・ホームズの最初の作品らしい。ホームズとワトスンの出会いも書かれているから歴史的な作品だろう。伊藤計劃の「屍者の帝国」(絶筆)でも、この作品の背景が引用されている(もちろんゲイマンの「エメラルド色の習作」も本作のパスティーシュ)。
 アフガニスタンに軍医として赴いたワトスンが家も無く空虚な思いで過ごしていたところ、同居者として友人から紹介された一風変わった人物がホームズ。早速殺人事件が起こり、二人は解決のために捜査を開始する。
 なんでもお見通しなホームズの推理力が今となっては少々都合が良過ぎる気もするが、これが無いと名探偵という感じがしないのも事実。まあ百年以上も目の作品だし(1887年発表)、その辺は雰囲気を楽しむところだろう。第二部になっていきなりアメリカの砂漠での話になったからびっくりしたよ。ネットでちょこっとカンニングをしたら、前半と後半がちゃんとつながっているらしいとわかったので粘って読んだ。第二部は砂漠を舞台にした冒険小説風味。最後で第一部とのつながりがようやく分かる。構成にひねりがあるわけだが、すいったことは当時の小説では珍しかったのだろうか。
PENGUIN CLASSICSはや前書きや註釈が充実しているので作品のことがよく分かる(その分時間もかかるかも)。前書きには切り裂きジャックのことが切り裂きジャックとホームズというネタはよくあるようだが、年代が重なっているのだから当然だろうなあ。切り裂きジャックが登場する前にこれが書かれているのがミソで、ドイルは時代を予見していたのだろうか。