映画‘からっ風野郎’‘お嬢さん’

 先週の土曜日少し時間が空いたので映画を観てきた。普通の新作映画とはちょっと違うものを観たかったので、外出していたところに近いシネパトス三島由紀夫特集がやっていたのでそれにした。これまた古い趣のある映画館である。去年ぐらいにも行った記憶があるが、何を観たんだっけなあ。
 かたや主演を演じたヤクザ映画でかたや原作のラヴコメ映画と随分作風は違うが、それぞれ楽しめた。
 「からっ風野郎」。監督は増村保造。有名な監督だが初めて観たかも。頼りない二代目親分の三島由紀夫が刑務所内にも関わらず、対立している親分(根上淳)の組から命を狙われる話から始まる。人違いで他の囚人が殺されてしまったことから、出所をしぶるがなんとか警察に頼み込んでこっそりと出て、昔の仲間に会う。古くからの友人(船越英二)や叔父(志村喬)と一計を案じるが。といった話。もちろん台詞は上手くないし、見た目としても他の俳優さんから浮き上がって見える三島先生だが、驚くべきことに本格的な劇映画で本人出ずっぱりである。クライマックスのエスカレーターのシーンまで大した熱演ぶりでとにかく真剣に取り組んでいたことは間違いないだろう。敵の根上淳の子どもを誘拐したり、弱音は吐きまくるし、恋人(若尾文子)には暴力を振るうわで全くひどいキャラクターだけど何となく憎めないようなこともある。素人俳優を使ってのことだからやはり監督が上手いのかなあ。観ている間は飽きずに筋を追える。船越英二の役はヤクザだがインテリという設定で、学がない主人公がコンプレックスを持っているというのはかなり倒錯的で三島らしいのかもしれない。全然関係ないが主人公の元恋人でクラブ歌手を水谷良重のバナナのマンボ(みたいなやつようわからんが)がハスキーヴォイスの独特の歌唱でかなり強力だった(よく聞こえなかったが歌詞も変)。どこかでじっくり聴きなおしたい。そうそう先生自ら歌うテーマソングは深沢七郎作曲らしい→http://www.youtube.com/watch?v=xv5jXE0Zt48
深沢七郎のことはよく知らないんだけどね。ミュージシャンでロックも好きだったようだから興味はあるんだけど)
 さて「お嬢さん」。これも若尾文子だがこちらは主演。やや妄想癖のある女子大生が主人公の基本的にヌルめのラヴコメだが、川口浩や田宮次郎といった後のTV世代にもお馴染みの顔ぶれが揃ってちょっとしたコワいことも起こったりなんかして(もちろんヌルくですよ!為念)楽しく仕上がっている。父親の会社の部下とあまり疑問も持たずに付き合うような保守的な主人公に現代性はあまり感じられないけど、その時代の平均的なコメディだったのだろう。こうしたタイプの三島作品はあまり読んでいないが、さすがに創作範囲が広いなあ。