『第四次元の小説ー幻想数学短編集』三浦朱門訳

 ユニークな数学SF集。作品の内容についてイラストやテーマについてのエッセイがついているなど、数学解説の要素が多く含まれている。
「タキポンプ」エドワード・ペイジ・ミッチェル 数学教授の娘に恋した劣等生。結婚のため数学の難問を与えられたが。古典的パターンの小説(実際1873年のものらしい)だが、主人公が相談する学者がいい味を出している。
「歪んだ家」ロバート・A・ハインライン 友人の建築家の設計で出来た奇妙な家。ハインラインタイムパラドックスとか論理遊びが好きなんだなあ。ウルトラマンブルトンを思い出した。
メビウスという名の地下鉄」A・J・ドイッチェ 幽霊電車!X電車で行こう、ではないか!舞台はボストン。
「数学のまじない」H・ニヤリング・Jr 数学の出来ない生徒に手を焼いた教授が苦肉の策。数学とヴ―ドゥーできたか。これ好きだな〜。
「最後の魔術師」ブルース・エリオット 火星で脱出ショーを演じる魔術師。新ネタとして<クラインの壺>からの脱出ショーを行うことになったが。ちょっとミステリ仕立てになってる。
「頑固な論理」ラッセル・マロニー 6頭のチンパンジーが100万年の間タイプライターを打ち続けるといくらでも本が出来るよ!ってラファティの「寿限無寿限無」もあったな。いつからあるネタなんだろうなあ。
「悪魔とサイモン・フラッグ」アーサー・ポージス 悪魔の召喚に成功した主人公は、ある数学の問題を悪魔に出した。軽妙で楽しい。自分ではこれが集中ベスト。
 
 数学ネタなので図解が丁寧なのは嬉しい。各種読書ガイドもついていて参考になる。ただ出てくる小説や作家の方の情報は不十分なのでそこは残念。数学テーマだけでなく話としても親しみやすくバラエティに富んだチョイスになっているのに惜しいなあ。