ジョン・エントウィッスル

 ロックネタ。

 最近気になるのはジョン・エントウィッスルザ・フーの技巧派ベーシスト。
 確かに‘My Generation’のベースは強烈だが、正直なところテクニックうんぬんはよく分からない。
 興味深いのは彼の作る曲である。ザ・フーのベストで‘My Wife’を聴いたときは、口ずさみやすい楽しい曲に「やばい!怒った嫁さんがやってくるぞ!ジュードーのクロオビ、マシンガンを用意しろ!飛行機もな!」みたいな歌詞がのっていて大笑いした(恐妻家ネタの芸能人などを思い浮かべるとよい)。いやあピート・タウンゼントにもなかなかイイ笑いのセンスがあるではないか、と大きな勘違いをしてしまった。一番地味そうにしている人の曲だと気づいたのは最近のこと。
 棺桶やら骸骨やらX線フィルムをジャケットに使う異様なセンスは、死やもうひとつの世界に惹かれ続けたジョン・エントウィッスルの歌詞にもあらわれている。最近聴いたのは彼の2枚目のソロ“風の詩”。どの曲も聴きやすく、歌詞はあくまでも変(いや、ほんとに全曲変だ!)。ジャケットは不思議の国のアリス風。よく怪奇趣味とも評されているようだが、少し違うと思う。いわば《奇妙な味》なのである。幻想的な素材を扱いながら、暗い感じがあまりしないのだ。例えば本作の‘Nightmare’、「悪夢から醒めないんだ・・・」などといいながら夢から戻ってくるのが何だか嫌そうにも聞こえる。ソロ一枚目“Smash Your Head Against the Wall”の‘I Believe In Everything’は「サンタ、キングコングドワーフ、魔女、ゴブリン、グール、輪廻転生、何だって信じるさ!」という人を食った歌詞で、確かに怪奇趣味といえなくもないが、曲の転調の遊び(トナカイさん!)が入って、どちらかというと〈夜は墓場で運動会♪〉に近いのどかさだ。またそうした幻想風味の歌詞ばかりではなく、犯罪者やアルコール依存症や変質者といった素材も扱われる。そう、やはり〈奇妙な味〉といいたくなるのだ(当ブログ管理人としては)。
 またこの“風の詩”にはジミー・マッカロクも参加している。Wingsの“Venus and Mars”の‘Medicine Jar’の人である。この軽快な名曲、「薬のビンに手を突っ込んだままじゃだめだよ」という内容なのだが、当のジミーが1979年にドラッグで死亡。そして2002年、ジョンもまたドラッグで帰らぬ人となってしまうのである。