海外SF

『楽園の泉』 アーサー・C・クラーク

いまさらシリーズ。 科学的アイディアを基盤に、宇宙的スケールで人類を描いていくというSFのスタンダードを築いたクラークの正攻法な傑作。たしかにここに出てくる人類は、実際の人類より合理的に問題解決にあたっており、やや理想主義に過ぎるという感じ…

『子供たちの午後』 R・A・ラファティ

以前出版されたのが1982年だから四半世紀(!)も前になるのか・・・。タイトルから何となく可愛らしい子供向けの話が中心なのかと思っていたが、奇想天外なユーモアにあふれながらも残虐ないつものラファティで安心(?)した。ラファティの面白さを説明するのは中…

『ピーナツバター作戦』 ロバート・F・ヤング

小さい頃、ピーナツバターって嫌いだった。ピーナッツが元々好きではなかったし、甘ったるい味も加わって、さらに馴染めなかった。兄弟や同級生はピーナツバターが好きだった。皆が好きなものを嫌いだったんで、なんだか疎外感を感じたものだ。大人になると…

『太陽の黄金の林檎』 レイ・ブラッドベリ

本年最後はブラッドベリで。ブラッドベリは抒情的な作家というイメージが強く、なんとなく自分の守備範囲外だなあなどと思い、これまた不勉強にもあまり読んでおらず、本書も初読。「ミルク色の月はイリノイ州の上空に昇り、その光を受けて河はクリームに、道…

『フィーヴァードリーム』 ジョージ・R・R・マーティン

経営する蒸気船運輸会社が傾きかけたマーシュに好条件の出資を持ちかける謎の男ヨーク。一方農園主を装い、人を支配し生き血をすする〈血の支配者〉ジュリアン。19世紀中頃のミシシッピ川を舞台にした吸血鬼ものに軽くSFアイディアが組み込まれ、マーシュ…

『テクニカラー・タイムマシン』 ハリイ・ハリスン

映画監督バーニイは、つぶれそうな映画会社クライマックスにタイムマシンを使っての映画作りを持ちかける。何とか『ヴァイキング・コロンブス』製作が船出となるが、トラブル続きの上に後戻りは出来ないし、というお話。大男のヴァイキング、マッド・サイエ…

今度は青心社

まだまだ翻訳短編集の出版攻勢は続く。復刊ですけどね。 ちょっと懐かしい青心社SFシリーズが。 悪漢と密偵さん、アルファ・ラルファ大通りの脇道さんのところで知りました。 有難うございました。 あの頃はまだ手が出なかったんだよなあ。デーモン・ナイ…

『グラックの卵』 浅倉久志編訳

これは嬉しい♪肩の凝らないユーモアSFが並んでおり、楽しい。楽しいんでひとつひとつコメント。「見よ、かの巨鳥を!」 宇宙から巨鳥が飛んでくるというそのまんまの豪直球バカSF。 50年代なのに不思議と古く感じない。「ギャラハー・プラス」 酔った時だけ…

『グリュフォンの卵』 マイケル・スワンウィック

全体的に、ジャンル意識と(イラク戦争に異を唱え署名運動した)良識派の信念が感じられる短編集。自分としては、プラス卿とダージャーのコンビのスチーム・パンク風ピカレスク「犬はワンワンと言った」と〈マルコビッチの穴〉風の前半から壮大なSFになる「時…

『ページをめくれば』 ゼナ・ヘンダースン

名前をひらがなに変えました(深い意味はありません)。 ゼナ・ヘンダースンといえば「なんでも箱」だが、初読時にはよくある話でさほど傑作とは思えなかった。その頃は誰に言われたわけでもないが、とんがったものや小難しいものを評価している方が何となく…

『サンディエゴ・ライトフット・スー』 トム・リーミイ

まあ伝説の作品といって良いと思う(作者は42才の若さでタイプライターの前で死亡)。いつもながらのハーラン・エリスンの濃ゆい序文はとりあえず置いといて、決して派手な作風ではない。作品のヴァラエティはそれなりにあるもののアイディアや話の骨格はシン…

『影が行く』

記念碑的作品。このアンソロジーの高評価から翻訳SF短編出版が安定供給されるようになったと思っている。20世紀SF、奇想コレクション(など)へと続く中村融ブランドの確立ということも出来る。多くは1950年代以降の作品で占められ、モダン・ホラーSF集…

『フランケンシュタインの子供』

いくつか問題のあるアンソロジー。ひとつはシェリーの原典関連のものと映画関連のものが混在していること。もうひとつは、テーマに沿って集めて歴史的な流れを、というのは判るが結果的に古い作品と後の時代の普通のSFとで雰囲気に落差がありバランスを欠…

『マッド・サイエンティスト』

異常な科学者が巻き起こす不気味な物語、というアンソロジー。一部ちょっと違う感じの話もあるが。ちなみにすぐ下が原書の表紙。中々いい感じだけど、これじゃ日本では売れないかも(アメリカじゃどうなんだろ?)。印象に残ったのは、1960年の発表ながら昔の…

『一角獣・多角獣』 シオドア・スタージョン

一時は名のみ高くて手に入らない、という典型みたいな本であった。実際本気で読むつもりだったかわからない原書まで持っている。とにかく手に入りやすくなってヨカッター。というわけでようやく読了。スタージョンは魔術的な作家で、ちょっと他の作家にはな…